展示会出展を成果につなげるために、最初に決めておくこと
B2B企業が展示会出展を検討するとき、「出ること」が目的になってしまう瞬間があります。 ブースを設営し、スタッフをそろえ、パンフレットを刷る。 準備はしたのに、終わってみると名刺の束だけが残っていた。そんな経験をされた担当者の方も少なくないはずです。
「展示会に何百万円もかけるより、Webマーケティングに投資すべきでは?」という声も、経営層からよく上がります。 この問いに対して「どちらか」という答えは、実は問いの立て方が間違っています。 展示会出展とWebマーケティングを連動させて設計することで、どちらか単体では生まれない成果が生まれます。
この記事では、展示会出展を「事業開拓の仕組み」として設計するための考え方を整理します。
展示会出展とは何か——「商談の場」という原点
展示会出展とは、自社のサービスや製品を、特定の業界・テーマに関心を持つ来場者に直接届ける活動です。 B2B領域では、RX Japan(旧リードビジネス)が主催する専門展示会のように、業種・課題テーマで絞られた会場に、すでに関心を持った層が集まります。
ここで重要なのは、展示会は製品発表のショーではなく、「商談の場」だという認識です。
Jag Projectが支援したドイツのセキュリティ企業は、当時世界最大の展示会CeBITに何度も出展していました。 その企業の認識は明確でした。展示会は製品を見せる場ではなく、商談をつくる場だ、と。 RX Japan主催の日本の展示会でも、この認識のまま出展設計をしたことが、後述する成果につながっています。
展示会出展の前に、Webで「認知」を済ませる
多くの企業が見落としているのが、この順番です。
展示会での「はじめまして」は、来場者にとって情報過多の状態で起きます。 多数のブースが並ぶ中で、まったく接触のない企業のブースに立ち寄る来場者は限られています。
一方、Webで事前に自社サービスへの接触がある来場者は、ブースで「どこかで見た」という感覚を持ちます。 これは心理学でいう「単純接触効果(ザイアンス効果)」です。繰り返し接触するだけで、知覚される信頼度が上がります。
Jag Projectでは、展示会の半年前から、ターゲット層に向けてバナー広告を展開した事例があります。 ターゲットは「昨年の展示会に来場した方」や「自社プロダクトのページに一度でも訪れた方」です。
ここで重要な視点があります。
このリストを活用して展示会への認知を積み上げることで、展示会単体の成果が大幅に変わります。
Webで認知してもらい、展示会で「見たことがある」と感じてもらう。 これが、展示会出展の費用対効果を高めるための基本設計です。
この記事を読んで「自社の展示会設計を見直したい」と感じた方へ
まずは30分、現在の展示会出展の状況と課題をお聞かせください。 ブース設計・目的設定・Web連動の観点から、整理のお手伝いをします。
→ 展示会出展の課題を相談する実例:3日間で商談100件を実現した「逆営業」設計
Jag Project設立以前、私(Jag Yamamoto)はドイツのセキュリティ企業G DataSoftwareの日本法人のCEOを務めていました。日本法人の役割はマーケティングでした。このとき日本で初めての展示会出展を企画した際「誰もやったことのない出展をして、楽しみながら結果を出す」という1つのテーマをチームで共有するところから設計を始めました。
施策の一つが、ITショーとしては前例のない「生ビールの提供」でした。 ドイツのCeBITでは、展示会後にブースでパーティを開くのは常套手段です。 この慣習を日本に持ち込み、閉場アナウンスが流れる1時間前から、近隣ブースや接点を持ちたい企業に「展示会終了後、名刺交換で生ビールを差し上げます」と声をかけました。
展示会に来場するお客様への対応と並行して、出展企業への「逆営業」を設計に組み込んだのです。
結果は、出展3日間で出展企業だけで500件を超える名刺交換と、100件を超える商談でした。
ここで重要なのは「ビールを配る」という手法の面白さではありません。 出展企業・RX Japan・参加スタッフ全員が「1つのテーマ」を共有し続けたことが、実行力と成果につながった本質です。
会場の外も設計に含める
展示会出展の設計は、会場の中だけで完結しません。
発達障害のある児童向けのトレーニングソリューションの展示会出展を支援した際、プロジェクターを使った体験デモを計画していました。 しかし会場は照明が明るく、プロジェクターの投影効果が伝わりにくい環境でした。機材のためにブースを拡張する予算的な余裕もありませんでした。
そこで私達は、会場のすぐ近くの会議室をブッキングし、ブースでデモ予約を受け付けて、体験希望者を会議室へ案内する設計をとりました。
海外では、展示会期間中に近隣ホテルでクローズドな展示会を行うことも珍しくありません。 この手法を、日本のB2B展示会に持ち込んだ事例です。
Jag Projectの展示会支援事例について、もう少し詳しく知りたい方へ
B2B専門展示会での設計事例、Web連動施策の詳細、成果の内訳をまとめた情報を提供しています。 まずは状況を聞かせてください。
→ 展示会支援の事例・実績を見る展示会出展の効果を最大化する3つの設計原則
原則1. 目的と成果指標を先に決める
「なぜ出展するか」が曖昧なまま準備を始めると、ブースの設計も、スタッフへの指示も、フォローアップも、すべてがぼやけます。
展示会出展の目的として明確に設定しやすいのは「会期中の商談件数」です。 名刺交換数ではなく、「その場で具体的な案件の話ができた件数」を成果の基準にします。
原則2. WebとリアルをつないでB2Bマーケティングを設計する
展示会だけ、Web広告だけ、という単体施策から脱することが、費用対効果を高める最も確実な方法です。
展示会の労力を費用として見るのではなく、Webマーケティングとの接点の中に位置づけることで、投資対効果の視点が変わります。
原則3. 出展後のフォローまで設計に含める
展示会が終わったあと、名刺を営業担当に渡して終わりにしているチームは多いです。 しかし、展示会での接触だけでは記憶はすぐに薄れます。 会期後1か月以内のフォロー商談設計が、展示会出展の最終的な成果を決めます。
この記事のガイド構成
展示会出展に関連するテーマを、以下の記事で詳しく解説しています。
- 展示会出展の費用:準備から当日・事後まで、費用の内訳と「見えないコスト」を整理します。
- 展示会出展の目的:目的設定の型と、設定ミスが起きやすいパターンを解説します。
- 展示会出展のメリット:B2B営業における展示会固有の強みと、Webとの違いを整理します。
- 展示会出展の企画書:社内承認を通すための企画書の書き方を解説します。
- 展示会出展の効果:成果の測り方と、数字に出ない効果の見立て方を説明します。
- 展示会出展の費用対効果:ROI計算の考え方と、回収しやすい設計の方法を解説します。
自社の展示会出展とWebマーケティングの現状を確認したい方へ
展示会×Webマーケティング連動の診断を行っています。 出展目的の明確さ、Web施策との連動状況、費用対効果の設計状況を10分程度で確認できます。 出展を検討中の段階でも活用できます。
→ 展示会×Webマーケティング診断を受ける(無料)RX Japan株式会社. "展示会一覧". RX Japan. https://www.rxjapan.jp/, (参照 2026-05-21).
Zajonc, R. B. "Attitudinal effects of mere exposure". Journal of Personality and Social Psychology. 1968, Vol.9, No.2, p.1-27.
本多勝一. <新版>日本語の作文技術. 朝日新聞出版, 2015, 328p.